茅葺き民家のマド|茨城県筑波山麓の民家
日本の民家、といって頭に浮かぶのはどこでしょうか?
白川郷?大内宿?
おそらく茅葺の家は、なんとなく頭に浮かぶと思う。
今回は、そんな茅葺民家のマドに関するお話。
都市部に住んでいると気づかないけど、茨城の田舎に住んでた時は、身の回りに綺麗な茅葺があった。茅葺は、おそらく日本人の原風景であり、そして、山の近くに住んできた山間民族、日本人の特性な気がする。
でもそんな茅葺って、どんなものなんだろう?昔ながらの暮らしは、どんな風に営まれてきたのか?
今回は、開口部と言われるマドについて考えてみる。
東西南北の壁面におけるマド部分の割合を調べた結果が下の図。
左上の図からわかることは、今回調べた対象民家の点線をみると、南面開放だということがわかる。
続いて右の図は、平地部と山麓部で傾向が違うのか、という調査。平地の方が若干マドを大きく儲ける傾向にあるが、そこまでの差はなかった。
間取りを考えて見たのが左下。山麓の民家のうち、増改築があんまり行われていないと考えられる長方形の場合と、長方形に増築なのかぽこっととついた形の場合を調べてみた。すると原型と想定される長方形は南開口が多く、生活空間を増やす改修は、原型以外の方位にもマドを設ける傾向が見られた。
最後に時代別の図面を見てみると...。もっとも古い年代は、マドは小さく、南に少しあいていることがわかる。元々の日本人の暮らしは暗く、土壁に守られたものだったのです。続いて、19世紀のものはマドの割合が増える。西側に開いているのも特徴です。そして現代のものは、全体に大きなマドを持ち、かつ、南を大きく開くという傾向が出てきた。
茨城県は大きな面積を持つ起伏の小さな県。つくば市も広大な田園風景が広がる。そのため、広大な敷地の中に大きな家が設けられる傾向にあり、家は密集することなく、好きな方位を向いて建てられる。
だから、家は基本的に南面を多く取れる東西を長手にした平面とし、南にマドを多く持つ。光に包まれた、シンプルでいて、贅沢な暮らしなのかもしれない。
昔ながらの暮らしの知恵が内包された民家。美しいだけでなく、懐かしいだけでなく、美しいだけでもなく、実は機能的。
そんなことを知っておくと、民家の見方もちょっと面白くなるかもしれない。
今回の記事は、「佐藤布武、董梁、橋本剛:茨城県南地域における伝統的農家住宅の開口比 立地特性と平面形態に関する考察」という題目で発表したものが元になっています。