火災からムラを守るイキグネ|茨城県大増集落
茅葺民家は夏を涼しく、冬を暖かくしてくれる自然素材の家。
でも、だからこそ、火災にはめっぽう弱い。
今回は、火災でムラが焼けてしまい、その知見から常緑樹でぐるっと敷地の周りを囲った家が連続する集落のお話。
集落内を歩くとこのような景観。モチノキでできた高生垣は住居をすっぽりと隠している。見事に刈りそろえられた木々は、毎年住民たちによって整えられるという。
ではなぜこのような景観が形成されたのか?
オオマスコマスコマリマスコンドモエタラコマリマス
その理由は、この暗号みたいな地域に伝わるフレーズにある。
漢字にすると、
大増(小増)困ります。今度燃えたら困ります。
その昔、茅葺民家の集落は、火事によって全焼してしまった。その経験を二度と繰り返すまいと思った先人は、敷地の周りや建築物の隣に、水分が多い常緑広葉樹のモチノキを植え、高生垣を形成し、火災に備えた。
その結果生まれたのがこのムラ。
家が密集したところでは、高生垣の迷路みたいな空間が、集落の外縁部に行くと、広々とした中に凛々しくそびえ立つ高生垣の全景が見れて、それはそれで面白い。
また、日陰を作るとともに風を通してくれるため、夏は集落内が涼しくなる。
ここ大増に限らず、茨城県には民家や蔵の周りに緑の垣根が設けられることが多い。緑の垣根には様々な環境調節効果もあるんです。
静岡などにも多く見られるし、風が強いところでは緑の生垣は多く見られる。山形には食べられる生垣なんてものもあるし、日本全国に、様々な意味を持った生垣が存在している。
家の周りの緑の意味、想像すると面白いかもしれませんよ。
※今回の記事は、「豊川尚、佐藤布武、橋本剛:夏季における伝統的な生垣が集落機構形成に及ぼす影響 茨城県石岡市大増集落における事例」という題目で発表したものが元になっています。