ムラ・アイデンティティ

集落マニアによるブログです。「街の見方を知ったら、街はもっと面白くなる。」

厳しい気候から家を守る散居の知見。屋敷林と付属屋とカザライ。:山形県飯豊町

今回は「散居」という居住形態の話。

日本の村は家の連なりかたで様々な呼び方がされる。

家がポツンポツンと離れて立地している居住形態を「散居」と呼び、対して、群をなすものは「集村」と呼び、その中でも道に面しているものを「路村」、塊を成すものを「塊村」などと呼ぶ。

先の記事でもあげたが、日本人は山の辺や谷地、海辺に住み始めた。これらが縄文に由来する住み方だとすると、農耕を覚えた日本人は、次なる居住地として盆地を求めた。更に、治水技術が向上すると平地に進出する。

日本で有名な散居村として、

・砺波平野の散居村

・出雲平野の散居村

・長井盆地の散居村

があげられる。

上述のムラの立地を鑑みると、歴史的強度の強い散居村の一つとして、長井盆地の散居村が考えられる。

 

散居って、どんなところかというと、家が離れているからこそ、ひとつひとつの家で地域の気候風土に対応しているような地域。また、平地や盆地に発達するため、厳しい季節風と洪水被害に悩まされる地域。

お隣さん、がいないということは、強風を直に受けることになる。現在の高気密・高断熱の家と異なり昔ながらの家は隙間風もビュービュー。

だから、家の周りに緑を植え、敷地内の構成を複雑化することで、家を守ってきた。様々な固有名称をもつ屋敷林を敷地境界に巡らし、付属屋で家をまもる。そんな日本特有の景観を育んできた地域。

山形県飯豊町は、まさにそんな典型的な地域。

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厳しい気候の中で、家を守っている緑たち。

そして、木々の樹間には、さらなる美しい工夫も。

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これは、カザライという風除け。美しいカヤの境界。

これ、美しいだけでなく、とても機能的なんです。

冬の間、家を厳しい季節風から守ったカヤは、同時に非常に乾かされることにもなる。よく乾いたカヤは、そのシーズンの屋根の葺き替えに利用される。なんとも素敵な植物資源の循環。こういった気候への対応が、茅葺を守ってきた。

山形県飯豊町

これは、是非とも残していきたい、日本の景観です。