小さな浜の大きな背中のお話:宮城県石巻市桃浦
集落を訪れ続ける理由。
それは、地域を愛する人々からお話を聞く幸せを蓄積したいから。
そして、美しい集落が継承されて欲しいという願いを込めて。
今回は桃浦のレジェンドのお話。
実はこの人、圧倒的な漁獲をしたこともある伝説の船長。
宮城に彼あり、と言われ、日本から3艘だけの遠洋漁業の船長に選ばれ、そしてその中でいちばんの漁獲をあげた、世界を股にかけた船乗り。
もう一つの逸話。
「戦時中、2艘でアメリカに向かう道中、自分の船はたまたま呼び戻されて延泊した。だけど同じ目的地に向かっていた仲間の船が米軍の水中爆弾の実験に巻き込まれてしまった。たまたま生かされたなぁ」とさらっと話してくれる。
そして、いろんな経験を経て、ようやく生まれ育った浜で自由気ままな老後の生活を過ごしていたら、東日本大震災の被害にあった。
自分の家は床上浸水。でも親戚の大工さんに頼んでなんとか改修ができた。
そんななか、震災で約1/10まで人口が減ってしまった集落。突如訪れた超限界集落としての故郷。生まれ育った、愛する浜が継続して欲しいという願いから、2013年、集落外から人を呼び込む取り組みを始めた、当時84歳、今年で90歳の浜の長老。
http://hamatsukuri2013.sakura.ne.jp/indexn.html
なんでこんなことするんですか?と聞いたとき。
「だって生まれ育った浜だから。世界の海を見てきたけど、こんなにいいとこ他にはない。自分ができるのは震災後、次の世代に浜を残していくための種を植える作業だけ。いつか芽が出て花が咲くのを願って、いま自分にできることを続けているだけだ。」
できる限りこの人の歩みにご一緒したいな、と思い、一生懸命、志を継ぐ活動をしてきた。
http://www.momonouravillage.com/
https://triton.fishermanjapan.com/
気がついたら漁師を募集する小さな浜から始まった取り組みは、石巻全域に拡がっていき、視察にきた人々が更に拡げていってくれている。
「こんなに嬉しいことはない。」
昨夜、酒を酌み交わしているときに言ってくれた。
人生のイロハを叩き込んでくれた大先輩。まだまだ学ばせてもらいたいですね。