ムラ・アイデンティティ

集落マニアによるブログです。「街の見方を知ったら、街はもっと面白くなる。」

漁村の方位:三重の漁村

1月末に三重と和歌山の漁村を巡った。

東北の漁村はここ3年何度も回って、いろいろな建築を見てきた。

しかしながら、東南海地域に縁が薄く、いままでじっくりと見ることができていなかった。

せっかく昨年から名古屋に居を移したので、どっぷりと東南海の漁村の勉強も始めるか、と重い腰をようやくあげた。

新しい地域を訪れる前に必ず目を通すのが、民家・集落研究家のバイブルとでもいうべきこちらの書籍。

 

カバーページ

https://www.nanyodo.co.jp/php/detail_n.php?book_id=N0080618

 

しかしながら、こちらは農村の豪農の家や商家の家が多い。

そもそも漁村は、強い潮風の影響で、あんまり家の残りがよくないというのが通説。

更に、漁村が発達しやすい海の近くの平地部は、太平洋沿岸の場合津波の影響を受けて民家が失われている場合が多い。なのでもうちょっとマニアックなものにも目を通す。

「日本の漁村 集成」の画像検索結果

http://www.toyoshorin.co.jp/sdetail.php?isbn=4887216211

 

こちらは都道府県ごとの代表的な漁村を紹介してくれる。建築の記述は少ないが、漁村の生業を事細かに伝えてくれてとても面白い。

そんな下調べをして、めぼしい地域をチェックして、いざ、漁村へ!!

 

今回みるのは、三重県のとあるこちらの集落。

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地理院地図:https://maps.gsi.go.jp/ より引用

 

さて、三重や和歌山を巡って実感したのが、意外に北や東を向いた方位にムラが発達していることが多いこと。

普通に考えたら南に海があった方がいい。だって家の中に光が入るのだから。

でもそうしないのはなぜか??

ちなみに東北の漁村の多くは南を向いている。

東北になくて東海にあるもの。それは比較的穏やかな気候と台風の経過の確率、かな、と。

つまり、毎年来る台風から身を守るのが先決で、冬季にそこまで冷え込まない東海では、日照はそこまで重視されないのか?と。

これはあくまで試論だけど、そんな妄想をしながら歩いた。

 

続いて、家の密集度をみてみる。

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西を見た風景(東斜面)。筆者撮影。

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同じく南を見た風景(北斜面)。筆者撮影。

 

南側の家々の方が奥行きがあるし、経年変化した屋根が多いのに気づく。つまり、南側の方から住み始めた可能性が想定される。

東斜面を見てみると、上部は若干山がセットバックしている印象もある。こちらの密集度や建物の年代を推測すると、きっと開発は早くないのではないか。

家を見ても、おそらく南から住んでいるのだろう。

台風の影響を受けにくい場所から住み始めているようだ。という試論、あながち間違っていないのかも...?

ここから先は住民にヒアリングしたり、古くからの本家の位置を聞いたり、ともっと深い調査が必要。今回のところは、これくらいの妄想で留めておこう。

 

ムラの見方の基本は方位。どの方位に対して、どんな風に家が建っているのか。

それを見て違和感があったら、そこにはきっと理由があるはず。それは、街の特徴とも言えるだろう。