ムラ・アイデンティティ

集落マニアによるブログです。「街の見方を知ったら、街はもっと面白くなる。」

お米を守る建築|板倉の知見あれこれ

だいぶ更新が滞ってしまいました...。 今回は「板倉」という木の倉のお話。 クラというと、蔵と倉がある。 米倉、味噌蔵(倉)、衣装蔵。 これは石巻でお話を聞いていた時に聞いたキーフレーズ。クラには様々な役割があるものの、字は体をなしています。 蔵、…

重厚な屋根と堅牢な建築|対馬の石屋根

以前の記事で書いたスレート屋根の地域・石巻市雄勝町は、実は日本の中で5指に入る有名な石を使った建築の産地。 石の建築で有名なのは、 ・宮城の玄昌石(スレート屋根) ・栃木の大谷石 ・長野の鉄平石 ・東京のコーガ石 があげられる。 今回はこれらの一…

中世から続く三陸沿岸のムラ|宮城県石巻市雄勝町大須浜集落その1

東日本大震災から丸8年が経過した。 震災の爪痕は大きく、失われたものは多い。震災後、石巻で様々な活動をご一緒する機会に恵まれた筆者にとっても考えさせられることは多い。失われた人命が何よりの損失であり、最も大切なものであったことは論をまたない…

産業景観ータバコ産業が生み出した集落景観ー|福島県船引町

日本の住居史は、竪穴式住居から始まる。その後も長らくこの住居形式が庶民の住居であった。中世の頃には掘立小屋のようなものが西日本を中心に出てきたと推測されている。この頃の居住の跡は柱のみで、穴を掘っていた時代と比べると、痕跡を発掘することは…

生きるための知見、ソテツバテ|鹿児島県奄美大島

ソテツバテ。 これは、食糧難の時代を生き抜いた離島の知恵。台風銀座、奄美大島の文化的景観です。 離島の海岸沿い。台風がよく通る地域。 その昔、離島は食糧を得るのがとても大変。だから自給自足が大原則。生きるためにはもちろんコメが必要。だから稲作…

飛騨の板倉|岐阜県種蔵集落

飛騨に「種蔵」という集落がある。 山に守られ、棚田と板倉が織り成す美しい風景。 まだこんなに美しい地域があるんだ、と思う。 飛騨古川から更に北に行ったところ、川に沿った県道を登っていく。ムラは人の住むところだから、通常、ムラは道沿いに位置する…

茅葺き民家のマド|茨城県筑波山麓の民家

日本の民家、といって頭に浮かぶのはどこでしょうか? 白川郷?大内宿? おそらく茅葺の家は、なんとなく頭に浮かぶと思う。 今回は、そんな茅葺民家のマドに関するお話。 都市部に住んでいると気づかないけど、茨城の田舎に住んでた時は、身の回りに綺麗な…

火災からムラを守るイキグネ|茨城県大増集落

茅葺民家は夏を涼しく、冬を暖かくしてくれる自然素材の家。 でも、だからこそ、火災にはめっぽう弱い。 今回は、火災でムラが焼けてしまい、その知見から常緑樹でぐるっと敷地の周りを囲った家が連続する集落のお話。 集落内を歩くとこのような景観。モチノ…

厳しい気候にみんなで対抗する「塊村」:福島県会津若松市北会津町

今回は、集まって住む居住形態「塊村」のお話。 北会津町が立地するのは会津盆地。先の記事でも触れたように、盆地は、農耕を覚えた日本人が住み始めた土地。会津盆地の例外でなく、集落の起源を探ると、500年代や600年代はざらに出てくる。極めて歴史的強度…

厳しい気候から家を守る散居の知見。屋敷林と付属屋とカザライ。:山形県飯豊町

今回は「散居」という居住形態の話。 日本の村は家の連なりかたで様々な呼び方がされる。 家がポツンポツンと離れて立地している居住形態を「散居」と呼び、対して、群をなすものは「集村」と呼び、その中でも道に面しているものを「路村」、塊を成すものを…

ムラはどこに形成されるのか:バイブルとしての「日本の景観」と「図説集落」

災害大国日本。 その中で家が果たしてきた役割は大きい。家は人間を外敵から守るものであり、近代化以前は自然に寄り添って暮らしてきたものでもあった。人はどこに住み、どういう安全性を確保してきたのか。ということは、ムラを考える上での原点とも言える…

小さな浜の大きな背中のお話:宮城県石巻市桃浦

集落を訪れ続ける理由。 それは、地域を愛する人々からお話を聞く幸せを蓄積したいから。 そして、美しい集落が継承されて欲しいという願いを込めて。 今回は桃浦のレジェンドのお話。 実はこの人、圧倒的な漁獲をしたこともある伝説の船長。 宮城に彼あり、…

津波とムラ:岩手県陸前高田市広田半島・根岬集落

地震大国の島国、日本。 水産資源に恵まれたこの国は、同時に津波と戦って来た地域でもある。 津波の被害を受けると色々な策を講じる。 明治時代、明治三陸津波の被害を受けた人々は高地に家を移したという。しかしながら、漁業の利便性を求めて人々は再び海…

大切なものを守る場所「クラ」の知見:宮城県石巻市北上川沿いと岐阜県安八町

近年、身近なものではなくなりつつあるクラ。 自分にとっても原体験としては存在しておらず、例えば鑑定団などのテレビの世界で掘り出し物を見つけられたり、子供向けアニメの世界で閉じ込められたり、といったところが記憶にあるもの。 でも、古くから、ク…

ムラの共通項:三重県尾鷲市の石垣

ムラ歩きで最も基本となる視点は、街の「共通項」探し。 一つのムラでおんなじような特徴が見られたら、それはそのムラの特色かもしれないし、隣り合ったムラでも一緒だったら、それはきっと地域規模での特色なのだろう。 同じ方向の屋根が並ぶ景観。筆者知…

漁村の方位:三重の漁村

1月末に三重と和歌山の漁村を巡った。 東北の漁村はここ3年何度も回って、いろいろな建築を見てきた。 しかしながら、東南海地域に縁が薄く、いままでじっくりと見ることができていなかった。 せっかく昨年から名古屋に居を移したので、どっぷりと東南海の漁…

漁師の家はどこに設けられるのか|宮城県・石巻市侍浜

今回は家の立地の話。漁師の家はどこに設けられるのか?そしてどんな特徴があるのか? 今回の舞台は宮城県石巻市、侍浜。 石巻市は東日本大震災で大きな被害を受けた地域である。 筆者がちょうど大学を卒業するタイミングで東日本大震災が起こり、大学院に進…

ムラ・アイデンティティ

集落の研究をしているものです。 このブログでは、集落をはじめとしたローカルな地域を「ムラ」と呼び(たまに都市の中のローカルなども扱います)、そこに見られる様々な知恵や工夫、文化の蓄積などを記録するものです。 地域を見ると、とても魅力的なエイ…